2025年秋にスタートした、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
怪談を愛する主人公・松野トキと、異国の地からやってきた英語教師・ヘブンの物語が描かれます。
そんなドラマのモデルとなったのは、文豪・小泉八雲と妻のセツ。
八雲は、日本の怪談を世界に広めた偉人として知られていますが、セツと出会うまでは孤独と苦悩の連続でした。
今回は、小泉八雲のメンドクサイ一面と、それを支えた妻セツとの不思議な愛の物語を、じっくりたどってみませんか?
『ばけばけ』を、もっと楽しみたい方は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね(*’▽’)!
孤独とコンプレックスを抱えていた小泉八雲

1896年に日本国籍を取得して『小泉八雲』となった、ラフカディオ・ハーン(パトリック・ラフカディオ・ハーン)
その生涯は、愛する人・セツと出会うまで、苦難の連続でした。
八雲の波乱に満ちた物語は、故郷であるギリシャの美しい島から始まります。
波乱の人生〜隻眼と両親の離婚〜
1850年6月27日、当時イギリスの保護領であったレフカダ島で誕生した八雲。
父はイギリス軍医であったチャールス・ブッシュ・ハーン、母はギリシャ人のローザ・カシマティです。
八雲は3人兄弟の次男でしたが、長男は早くに亡くなり、弟は後にアメリカで農業を営むことになります。
裕福な名士の娘であった母と、アイルランド生まれの軍医である父の結婚は、当時の社会ではめずらしい国際結婚でした。
しかし、その幸せな生活は長くは続きません。
父が軍の仕事で西インドへ転属になった後、精神を病んでしまった母は、八雲がわずか5歳の時に故郷ギリシャへ帰国。
そして、1857年1月に両親の離婚が成立します。

離婚後はほとんど両親に
会っていないんですって
『両親に捨てられた』という経験は、生涯にわたり八雲の心に深い傷を残すことに…。
その後、父が再婚したため、裕福な大叔母サラ・ブレナンに引き取られました。
厳格なカトリックの教えを、サラから強いられた八雲は、反動でキリスト教に反感を抱くようになります。
その結果、形式的な教えにとらわれないケルト神話や、土着信仰に強く惹かれていきました。

自然や暮らしに根付いた日本の信仰に興味を持ったのも納得できるね
1865年、16歳の時。
さらなる悲劇が、八雲を襲います。
寄宿学校で回転ブランコ「ジャイアント・ストライド」で遊んでいる最中に、ロープの結び目が左眼に当たって失明してしまうのです。
容姿へのコンプレックスと強すぎるこだわり
少年時代の八雲は、お茶目で明るい性格でした。
しかし、16歳の時に左目を失明してからの人生は一変します。
義眼のため、左右で目の色が異なってしまった八雲。
その見た目に、強いコンプレックスを抱くようになってしまいました。
写真を撮る際には、顔の右側のみをカメラに向けたり、うつむいたりして、決して左目が写らないポーズをとっていたんですって。
この行動から、八雲がどれほど深く傷ついていたかが伝わってきますね。

だから内向的になって
しまったんだね…
ただその一方では、プライドが高く、カッとなりやすい激情家でもありました。

怒りに火がつくと
もう手が付けられない!
仲の良い友人とも、ケンカ別れをすることが度々あったんですって。
でも、不思議なことに、八雲が困った状況になると、必ず誰かが手を差し伸べてくれたとか。
八雲が書く文章にも、強いこだわりが表れています。
アメリカの新聞記者時代には「オールド・セミコロン(古風な句読点)」なんて、ニックネームを付けられてしまいました。
句読点一つですら、自分の文章に一切手を加えさせないという徹底ぶり(*’▽’)!
作品への熱いこだわりを、物語っていますよね。
日本に帰化してからも、熱心に執筆活動を続けた八雲。
著作の原稿料にはとてもこだわっていたのに、貯蓄にはまったく関心がなかったそうです。

高収入だったみたいだけど…
妻セツの『思い出の記』によると、八雲は「良い!」と思った物には、提示された金額よりも多くお金を払っていたそうです。
また、学生たちに自腹で本をプレゼントするなど、収入の多くを生活費や旅費、さらには人のために惜しみなく使っていたみたいですね。
アメリカでの放浪生活と黒人女性との結婚
イギリスでの貧しい学生生活を終えた八雲は、19歳で移民船に乗り、アメリカへと渡ります。
当初はニューヨークに上陸したものの、親戚を頼ってシンシナティに向かってからは、すぐに経済的に困窮し、ホームレス同然の極貧生活を送ることに。
そんな八雲を救ったのが、印刷屋のヘンリー・ワトキンでした。
彼は八雲を雇い、印刷の技術や知識を身につけさせてくれたんです。

実の父のように慕い続けたんだって
印刷屋での経験を経て、ジャーナリストとしての頭角を現した八雲。
新聞社に就職し、次第に名を挙げていきました。
そして、24歳で黒人女性のアリシア・フォリー(マティ)と出会い、最初の結婚をします。
しかし、当時のアメリカは人種差別が根強く、白人と黒人の結婚(異人種間婚姻)は法的に認められていませんでした。
このため、八雲は社会から激しい偏見にさらされ、勤めていた新聞社も解雇されてしまいます。
二人はやがて別れることに…。
ただ、この経験は、八雲の異文化への深い理解と、社会の弱者への強い共感が生まれるきっかけになったのかもしれません。
日本にたどり着いた八雲とセツの運命的な出会い

マティとの離婚後、八雲はニューオーリンズへと移り住みます。
編集助手の仕事をしながら、食堂『不景気屋』を経営するも、残念ながら失敗。

なかなか上手くいかないね…
日本神話を含む歴史書『古事記』の英訳版を読んだ八雲は、1884年の万国博覧会に行ったことから、日本に興味を抱くようになりました。
そして1890年、彼はアメリカの出版社の通信員として、ついに日本へたどり着きます。
しかし、来日後に出版社との契約を破棄。
40歳で松江の英語教師となり、住み込み女中だった18歳年下の小泉セツと出会います。
言葉や文化の違いに戸惑いながらも、次第に心を通わせていく八雲とセツ。
自分にはない優しさや、日本の文化を深く知るセツに惹かれ、二人は結婚しました。

やっと孤独から抜け出せた!
1896年、家族のために日本国籍を取得し『小泉八雲』という名を名乗ることになります。
この名は、『古事記』でスサノオノミコトが詠んだ日本最古の和歌から、セツの養祖父である稲垣万右衛門が名付けたもの。
八雲は「八雲立つ」という、出雲の地にかかる枕詞を、とても気に入っていたそうですよ(*’▽’)!
『怪談』を生みだした夫婦のエピソード

小泉セツと運命的な出会いを果たした八雲。
人生の後半は『怪談』をはじめとする、数々の傑作が生み出された時期でもあります。
愛妻家で繊細
でもちょっとメンドクサイ男?
そんな人間味あふれる八雲とセツのエピソードを、いくつかご紹介しますね(*’▽’)!
ヘルンさん言葉でコミュニケーション
日本語があまり上手ではなかった八雲。
妻・セツも、頑張って英語を勉強しましたが、残念ながら身につかなかったそうです。
そこで、二人の間で生まれたのが『ヘルンさん言葉』という片言の独特な日本語でした。
これは、簡単な単語と、身振り手振りを組み合わせたもので、もちろんセツ以外には全く通じません!
実際、八雲のもとに英語ができないお客さんが来ると、セツが通訳することで、かろうじて会話が成り立っていたとか。
この『ヘルンさん言葉』があったからこそ、かえって言葉の壁を越え、お互いに深く通じ合えたのかもしれませんね。
傑作を生んだ『お化け提灯』
夜な夜なセツが怪談を語り聞かせる際、八雲の創作意欲を刺激したのは、部屋の『お化け提灯』が作り出す情景でした。
障子に映る提灯の光と影が、まるで生きているかのようにゆらゆらと揺らめく。
この幻想的な雰囲気が、八雲の想像力をかき立てたといわれています。
「原稿は9回書き直さなければまともにならない」というほど、文章にこだわっていた八雲。
その土台となっていたのは、日本の文化を深く愛するセツさんの物語だったんですね。
実は、幽霊が苦手で怖がりという、意外な一面もありました。
でも八雲は、日本の怪談が持つ哀愁や美しさには、心から惹かれていたのです。

怖がりなのに怪談が好き?
この二面性こそが、『怪談』をただの怖い話ではなく、日本人の心を深く描いた文学作品へと、生まれ変わらせたのかもしれませんね。
『耳なし芳一』誕生の裏側
小泉八雲の代表作といえば、やはり『耳なし芳一』でしょうか。
この物語は、セツが家族や地元の人々から聞いた怪談話を、八雲に語り聞かせたのが始まりです。
セツの語り口は飾らずまっすぐで、物語の細部まで生き生きとしていたそう。
八雲はその語りを、文学的なセンスや、異文化を理解する独自の視点で再構築しました。
もし、セツという最高の語り手が隣にいなければ、この『耳なし芳一』が世に出ることはなかったかもしれませんね。
グルメ文豪の秘密?家族と別メニューだった食卓
日本でセツと国際結婚した八雲ですが、食に関しても「強いこだわり」が見える一面がありました。
西洋料理が必須!
家族とは別メニューの食卓
来日直後は、慣れない日本食にも挑戦していた八雲ですが、和食が続きすぎて体調を崩してしまったそう。
それからは、洋食中心の生活に戻したそうです。
好物は、ビフテキやプラムプディングなどの西洋料理だったため、セツは他の家族とは違う食事を用意していたんですって。
献身的なセツのサポートとお取り寄せ
そんな食事にも強いこだわりを持つ八雲を、セツは献身的に支えていました。
八雲が好んだビフテキは、松江の西洋料理店「魚才」から取り寄せてもらい、毎晩の夕食にしていたという記録が残っています。
また、生涯最後となるクリスマスには、大好物のプラムプディングを、わざわざイギリスから多額の費用をかけて取り寄せたとか。

セツはプラムプティングを
作ってあげなかったの?

当時の日本では材料が
手に入りにくかったみたいよ
好物はウナギとビール?繊細な偏食家
そんな八雲ですが、ウナギと奈良漬は好きだったとか。
特にウナギの蒲焼きは、好んで食べていました。
ただ、糸こんにゃくは見た目が『虫に似ている』という理由で、大嫌いだったそう。

繊細…
和菓子をつまみにして、ビールを飲むのが八雲の日課。
紅茶も好きで、ティータイムを楽むこともありました。
食事の進め方にもこだわりがあり、コース料理のように一つの料理が食べ終わるたびに、皿を片付けさせていたんですって(*’▽’)!

ちょっとメンドクサイ男だね…
この食へのこだわりも、文豪・小泉八雲の個性の一つだったのかもしれませんね。
転々とする移住先と八雲の「愚痴」
その後、八雲とセツは経済的な安定を求めて、熊本、神戸、東京へと移り住むことになります。
松江の、静かで古風な雰囲気が大好きだった八雲。
移住した先の町は西洋化されすぎていて、とても不満だったようです。
特に熊本にいた頃は、人間関係もうまくいかず、孤立していまいました。
親友・西田千太郎宛ての手紙では、かなり強い愚痴をこぼしていたほど。
面倒を見なければならない家族がいなければ、まだ息子がそんなに幼くなければ、日本にはもう一日たりともいたくありません。
出典:Wikipedia-小泉八雲
八雲の不満は東京に移ってからも続き、「3年以上の東京暮らしは難しい」と、セツに漏らしていました。
しかし、セツは都会での生活を気に入っていたため、田舎への再移住には反対します。
そこで、少しでも気に入ってくれるように、静かで趣のある住宅を探し出したんですって。
八雲は「日本の文化を深く愛した文豪」というだけでなく、「偏屈で不器用だけど、妻に支えられた一人の男性」だったんですね(*’▽’)!
『ばけばけ』ヘブン役はトミー・バストウさん!
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、明治時代の松江が舞台。
怪談を愛するヒロイン・松野トキと、異国からやってきた英語教師・ヘブンとの何気ない日常が描かれます。
🎬朝ドラ『ばけばけ』30秒スポット
— 朝ドラ「ばけばけ」公式 放送中 (@asadora_bk_nhk) September 27, 2025
放送開始まであと2日!
第1回の放送は9月29日スタート
【総合】午前8:00から
【BSP・BS4K】午前7:30から#ばけばけ #9月29日スタート pic.twitter.com/74BlJunXTq
そんなドラマのモデルとなったのが、文豪・小泉八雲とその妻、セツです。
ヘブン(後の小泉八雲)役を演じるのは、イギリス出身の俳優で、ミュージシャンでもあるトミー・バストウさん(*’▽’)!
【#ばけばけ人物紹介】
— 朝ドラ「ばけばけ」公式 放送中 (@asadora_bk_nhk) August 4, 2025
レフカダ・ヘブン:#トミー・バストウ
新聞記者として取材のために来日したが、縁あって松江で英語を教えることになる。
同僚の英語教師・錦織友一のサポートを受けながら、松江での日々を送る。ひょんなことから、トキと出会い交流が始まる。#ばけばけ #9月29日スタート pic.twitter.com/zfPnNW0tYJ
- 生年月日
1991年8月26日 - 出身
イギリス - 主な出演作
2024年に世界的な注目を集めたドラマ『SHOGUN 将軍』でマルティン・アルヴィト司祭役を演じる
実はトミーさん。
大の日本文化好きで、日本語を10年ほど勉強しているという、語学堪能な方なんです。
来日経験もあり、千葉県や東京都で半年間ほどホームステイをしていたこともあるとか。
日本に興味を持ったきっかけは、黒澤明監督の映画で、俳優の三船敏郎さんに心を奪われたことなんですって。
今回の朝ドラ『ばけばけ』では、総勢1700人を超えるオーディションの中から、ヒロインの夫役に抜擢されました。
トミーさんの柔らかな雰囲気と、複雑な内面を表現する演技力は、偏屈でチャーミングな文豪・小泉八雲の役柄にぴったりですよね。
まとめ
小泉八雲の生涯は、隻眼のコンプレックス、両親との離別、異文化での苦悩といった、孤独と苦難に満ちたものでした。
しかし、日本の文化への深い興味と、妻セツとの運命的な出会いによって、その全てを乗り越えていきます。
セツは、八雲を孤独から救っただけではありません。
才能を大きく開花させた「最高の語り手」であり、彼の人生そのものを形作った人でした。
偏屈で繊細、ちょっとメンドクサイ八雲と、献身的で力強いセツ。
個性が全く違う二人が、ぶつかり、支え合いながら生み出した『怪談』は、今も世界中の人々に愛されています。
朝ドラ『ばけばけ』の展開も、今後どうなるのか楽しみですよね(>_<)!


